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ケルンVSドルトムント part1ドルトムントの攻略法はやはりハイプレスが最適か?

ケルンの勢いとドルトムントの最近の状態を考えるとホームチームの前者が勝つと予想した方も少なくないと思います。ケルンとしては奇跡の残留も可能性が出てきたなかでこの試合最低でも勝ち点1は欲しかったと思います。結果、3対2で終わりましたがケルンも他のチームにならった戦い方をすれば十分勝ち点をものにできたのではないかと分析しています。ケルンがどのような戦術で挑んだのかレポートしたいと思います。

まずは両チームのラインナップです。


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まぁいつも通りですね。大迫の欠場は残念でしたね。

最近の対ドルトムントの試合を見るとかなりのチームがハイプレスをしています。今回も例によって勢いのあるケルンがそのようなやり方で来ると予想していました。しかし、まったく逆でした。かなりラインは深く守ってましたし、陣形を保って自分のエリアに相手が来たらプレッシングをスタートさせるような感じでした。人を見るゾーンディフェンスという表現が正しいかどうかはわかりませんが、それに似たようなイメージです。それについて詳しくレポートをしていきます。

サッカーにおいてピッチを横に3分割するのは有名な話です。最近では縦で5つに分けて考えるのが主流になってきていますが、よく聞くのが横の3分割です。ファーストサードセカンドサードファイナルサードです。ケルンの守備はこのゾーンにおいてそれぞれが綺麗に組織されていました。具体的にいうとFWがファーストサード、MFがセカンドサード、DFがファイナルサードで守備します(厳密にいうとケルンは後ろ重心でラインが低めだったので、もちろんプレッシング開始ラインも下がります。したがって噛み砕いて言うと相手DF(ドルトムント)にはFW(ケルン)が、相手MFにはMFが、相手FW(ドルトムント)にはDF(ケルン)がつくという感じです)。決まりごととしてはなるべく自分のゾーンからはみださないこと、自分のゾーンに入ってきたところからプレッシングが開始というイメージです。

以上要点をまとめると

  1. ケルンはハイプレスを仕掛けることなく4-4-2の陣形をしっかりオーガナイズしつつ自分の担当エリアに入ってきた相手を見るいわゆる[人を見るゾーンディフェンス]の形であること
  2. 噛み砕いて言うと例えばドルトムントCBのビルドアップ(ケルンのプレッシング開始時点が低いので、ファーストサードではなく、セカンドサードが開始時点)には基本的には2トップが対応する。それはたとえヴァイグルなどがビルドアップに参加して数的優位を作られてもケルンMFたちは担当エリアを無視して飛び出すことは基本的にはNG
  3. ケルン2トップが剥がされて、MFが守るゾーンに入ってきたら守備を開始して、2ライン間にボールを入れさせないようにする。

画像で説明していきます。


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 先程、触れた通りケルンが後ろ重心だったためプレッシングの開始ラインが低くなります。したがって、この試合はドルトムントDF陣がボールを持つ位置も高くなっています。いつものドルトムントの試合では相手はハイプレスで来ることが多いので、ドルトムントのDF陣もファーストサードの位置で持つことが多いですが、この試合はどちらかと言うとセカンドサードがビルドアップの開始時点になることがほとんどでした。

ヴァイグルがボールを受けます。この時2トップに対してドルトムントは数的優位を作っていますが、ケルンはそこに対して人を投入することはありません。対ドルトムントではヴァイグルを消すのが定番となっていますが、少なくとも前半はそのような動きはありませんでした。また、香川も降りてきてますが、そこも密着マークはしません。なぜなら、担当エリアではないからです。


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 このシーンも同様です。先程、人を見るゾーンと言いました。陣形を考えるとヴァイグルは浮く選手です。4-4-2と4-3-3なのでドルトムントのインテリオール(香川、ダフード)に2CMがつく形が多くなるからです。そしたら2トップのどちらかを中盤におとすのも1つの手です。そうなるとヴァイグルの担当は2トップの一人、もしくは場合によっては2CMが対応することもあるでしょう。ここでも数的優位を作られているので2CMが前に出るのもありですが、ここも原則通りです。担当エリアではないので(FWの担当エリアなので)、前には出ません。


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こちらも同様です。

 

 

 


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ここではうまくドルトムントが展開できたシーンを紹介します。一枚目でまずプリシッチが降りてもらいます。ヨイッチは画像ではわかりづらいですが一瞬寄せる素振りは見せました。だが、プリシッチが反転しないだろうと予測して深追いはしません。すぐに所定の位置に戻ります。

その後プリシッチがトプラクにボールを渡します。トプラクは前方にスペースがあるのでドリブルで運びます。その後トプラクは右サイドのピシュチェクに展開しました。ここでのポイントとしてはまずクレメンス(右サイドMF)の守備です。クレメンスの守備位置がトプラクが侵入するごとに下がっています。


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 黒丸がクレメンスです。ずるずる下がってしまう要因としてはまずクレメンスの担当の選手がトルヤンであること、そしてシュールレのポジショニングです。相手のSBにはケルンのMFが陣形的にはまります。画像では紹介していないですが、ケルンも相手SBに入ったらサイドMFが対応するようなやり方でした。ここでもトプラクに入ったときクレメンスが2度ほど首をふってトルヤンを気にする素振りを見せました。そのためパスコースを切りながらの寄せになったのでずるずる下がりました。あとシュールレが2CMの間に入ることで2CMをピン止めしてます。ギラシーが戻って来ていますが、流れの中でプリシッチも中央に絞っているので侵入を防げませんでした。

しかし、ケルンとしては最初に紹介したように担当エリアに入ってきたら守備開始というやり方でした。だからこれは想定内と言えることかもしれません。そもそも前線は2トップだけでの守備なので数的優位を作られてそこを突破されるのは考えられる事態であるからです。そのためCBに侵入を許しても最悪2ライン間にボールを入れさせなければ良いし、もっというなら最終ラインで弾き返せれば良いくらいの感覚かもしれないです。現にケルンは低いラインを敷いていたしこのシーンを問題視する必要はないかもしれないです。

しかし、最近流行ってるいわゆる人を見るゾーンにおいてこれはかなりの弱点でもあると思うのです。近年はCBに求められる役割が大きくなっています。足元の技術はプラスαというよりはむしろ必須能力になりつつある時代です。そのためこのような侵入がピンチを招くことも考えられるのです。人を見るゾーンではある程度担当が決まっていて、しかしマンマークではないのでそこまでポジションを無視することはできません。だから、このように第一ディフェンス(ここでいうケルンの2トップ)が剥がされて侵入を許すと、ずるずる下がることが多々あります。それをよく示しているのが今年のマンチェスターCでしょう。マンCと戦うときは人を見るゾーンや特定選手のマンマーク(シティではデブライネとシルバが多い)を採用するケースが多いです。ユナイテッドに関してはダービーの時にオールマンツーマンに近い対策をとっていました。そのときによくオタメンディとかがドリブルで運ぶシーンをよく目にします。あれはオタメンディがパスコースを探しているともとれますが、どっちかと言うと誰も来ないから侵入できているという表現の方が正しいと思っています。それはCB担当が基本的にFWなのでそこを剥がされると「誰が行くんだよ!」という状況になります。シティの場合はうまくシルバ、デブライネがポジションをとりそこに出されるのが怖くて侵入を許すのは何回も見てます。人を見るゾーンでも担当エリア外の選手が来たとき誰が行くのか、どう受け渡しをするのかが明確ではないとピンチになることがあります。

この試合に限っていえばそこまでCBが侵入するケースが予想より多かったわけではないですし、このシーンでもこの後決定的な場面に繋がった訳ではないのですが少し気になったので取り上げて見ました。

 

part2では後半においてのケルンの守り方の変化と対ドルトムントにおけるベストな戦術について、つまり題名に対する解答を自分なりに書きたいと思います。